大人になってぼくはこんな詩を書いた
実にはっきりと
このときの寂しさを覚えている
遠い島根の隠岐の島での思い出である
そして、後
それはまだ少年の頃だったが・・・
東京へ越してきても
日々の生活は同じだったし
方言だけの田舎者には親しい友もいなかった。
夕暮れの町を
母と娘が手を繋いで歩いている
こんな光景を見たことがある
何度もある
母を見上げる子と、子を見下ろす母の
まなざしの通い合いを見たことがある
父と少年の元気な手繋ぎも見たことがある
それはぼくには羨ましい憧れだった
「いいなあ」と
じっと佇んだまま
こんな二人を見ていたことがある
いつからか ぼくにとっての夕暮れは
いつも寂しさと一緒にやってきた
寂しい夕暮れの
手を繋ぐ親子はきっと
世界一の温かさを紡いでいるのではないか
大人になって ぼくはそんな想像をしながら
母と子が手を繋いで歩く絵を描いた
♪あの町 この町
日が暮れる 日が暮れる・・・♪
心の中では
しっとりと濡れてしまっている
この歌を歌いながら・・・