【 玄冬・はじめに 】
梅の古木と花
公園で大きな古木に咲く梅を見た
一輪一輪は小さかったけれど清々しい姿だった
日向ぼっこのおじいちゃんの
お風呂のような愛の懐に
心を裸にしてとっぷりと浸かっている
まだ人生の汚れのない孫娘たちのようだった
人生という長旅に乾いた喉を潤すように
ぼくはその姿を心のカメラで撮影した
いつの間にか夢や希望や憧れに惑い
幾多の愛や憎しみの跡がついた心と
日々の生活の中のさまざまな出来事の海を泳ぎ疲れて
すっかり人生の汚れにまみれてしまった思いで
ぼくはこの公園に辿りついた
この梅の古木も
ぼくと同じような道を歩んだのではなないだろうか
けれどもう、喜怒哀楽の心の波を穏やかにして
明日へのすべての企みを放棄したときに
こんな風に懐を愛の温泉にできたのだろう
可愛い孫たちはそのお風呂に入っている
清々しい小さな梅の花になって咲きながら
古い公園でぼくは人生の終わりと始まりの清々しさを
おじいさんの古木と孫娘のような梅の花に見た思いだった