思い出の玉手箱                                               案  内   
om13
頬杖に思いが通う居間の春

 五歳ぐらいの娘であろうか。ぼくはきっと頬杖を教えたのだろう。ぼくの真似をしてふたりで頬杖をする愛らしさをきっと妻が写したものであろう。
 思いがけない写真が出てきた。いつ撮影したのかはまったくわからない。部屋は今の家を改造する前の家だ。まだ新築の家の部屋だ。
するとぼくは三十五歳前後だ。ぼくたち家族の幸せの絶頂期と言っていいかもしれない。中学校の学級担任をしながら常勝のサッカー部顧問教師をしていた。もうこの娘の弟は生まれているのだろうか。季節はわからないがふたりの着ている洋服と襖絵から想像して春先ではないかと思い季語を決めた。

 なんとのどかな写真だろうと思う。現在のぼくの最愛の孫の心音とみずきはこの娘から生まれた。思えば命はこうして繋がっていくのだなと思う。