思い出の玉手箱 案 内 | |
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幼子のお話しこぼし夏が行く |
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ぼくが幼稚園に勤めていたのはもう還暦を過ぎての嘱託の園長先生としてだった。子どもたちが登園している時はほとんど職員室にいて、ぼくの場合は入園したばかりの教室に入れない子の「お相手」だった。二、三週間でほとんどの子は教室に入れるようになるが、ぼくと仲良くなった子はときどき気分で職員室にきて甘える。 この子はとてもお利口さんでぼくたち先生(保育士・幼稚園教諭)のいう通りにしていたが、ときどきぼくに甘えてずっとお膝の上にいることがあった。ぼくが幼稚園を退職する時の送別会で、お母さんの後ろに回って別れの寂しさに泣いてくれた子だった。そんな子はこの子以外には誰もいなかった。だから、ぼくにはわからなかったが、とても仲の好い間柄だったのだろうと思う。お母さんにお願いして写真を見ながらこの絵を描いた。写真にして大きく伸ばし額に入れてお礼に贈った。 「ありがとうがざいます。我が家の家宝にします。」 お父さんがお礼を言ってくださった。お母さんの体調でこの子はずっと一人っ子だったと聞いている。 |
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