朗読詩集「花の少女たち Ⅱ」                     詩の道標    案内

二人だけの同窓会

 

遥かなまなざしで
きみはギターを弾いていた
十五の秋の午後
ぼくと一緒にうたった歌をうたいながら

歌よ
瑠璃色に輝いていた昨日よ
何処へ行ったのだ
ギターの調べよ
夕日の匂いのする
あの丘の草むらの青春よ
湧き立つような思いよ
むせるような悲しみよ

そして お前
いつも吹いていた 
エメラルドグリーンの風よ
ぼくたちの昨日を
お前は何処へ連れて行ったのだ

あれからふた昔
二十年ぶりの再会
みんな遠い
松林の向こうの潮騒のように遠い
だが はっきりと見える
はっきりと聞こえる
もう やさしくなりすぎたきみの目に
あざやかに映っている
ぼくたちの青春と
ぼくたちのむせるようなあの悲しみと
歌うしかなかった
思いの数々が
セピアの色で映っている


modoru




過去から帰ってきた鳥たちの
さえずりのような噂話
霧のように湧いてくる思い出の
おぼろな影をはっきりさせて
歌よ流れよ
ひそやかでいいから
十五の秋の午後の輝きでよみがえれ

おお それ その歌だ
きみのギターが
シャボン玉のように思い出を風に乗せる
ぼくは恥ずかしそうに小さな声で合わせる
すると追憶はいっそうあざやかに
そして透き通った瑠璃色を取り戻す

思い出が宝物になってくると
人はいつのまにか涙もろくなっている