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  随 想    書 斎    案 内


  ぼくの心に水面があるなら

 そこに映って微かにさざなみをたてたことを

 消えないうちに「文章」」にしておこう。

     時が移り、そのさざなみが消えてしまっても

     心の奥にもうそれは印刷されているように 


   みちしるべ     波の絵    あだ名        恋唄    プリンター騒動記    歌三昧
 


   恋 唄
  

きみに言いたいことがある

おぼろ月夜に辛夷の花が
レモン色に輝いたのはわかるよ
でも流れ星はぼくの心にバウンドして
彼方に流れ去ったよね?

けれどもきみは言う

たしか月光が美しくて
花たちがその光を浴びながら
幸せに酔っていたのかもしれない
(だから私も酔って)
私の瞳が星になって
あなたの胸に飛び込んでみたけれど
あなたの心は固くて入れなかったよ

ちょっと待ってよ

ぼくだって月光を浴びて
ひとりで夜道を歩いていたよ
枯れた落ち葉の足音のように
ぼくの思いが言葉の波になって
きみの心に打ち寄せていたはずだよ

でもね

言葉の波に私の舟は揺れていたの
なんだかね
あなたの港に係留できなかったの

わかるけど、寂しいな

夕べ
心が寒いから肩の温もりを貸してって
寄り掛かってきたのはきみじゃないか
冷えた心の訳なんか
ぼくは聞かなかったし
きみは言わなかったよ

ただ一緒に
あの恋唄を歌ったじゃないか
ふたりで揺れたじゃないか
それでよかったじゃないか
   

    御 託(ごたく)

 想像してみてください。外海(どんなに凪いでも、小さくうねる波はある)に、ぼくの乗った船ときみの乗った船がようやく近づいて隣同士に横付けしている。けれども、微妙な波の具合でぼくの船が沈むときみの船が浮き上がる・・・。つまり揺れ方が微妙にずれて動いて、複雑に揺れ続けているので互いの船になかなか乗り移れない。理屈では理解し合っているのに、互いに思いやる気持ちもあるのに心は外海の海に揺れる小舟のように通い合わせたくても通い合えなくて、もどかしい思い。
 恋の思いは奪いたい思い。
 愛の思いは与えたい思い。
でも、互いに揺れ合う船と船では、うっかり波間に落として沈んでしまいそうで、なんとなく手渡せないじゃないかという気持ち。
「もういいよ。何も言わないで二人、互いの人生という船に乗ったまま、同じ恋の歌を歌っているだけでさ。」そんな思いを微妙な恋心として書いてみました。

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