パソコン・プリンターの騒動記
長い間お世話になったパソコン・プリンター「キャノン製:LBP6200」が、ついに故障してしまいました。実によいプリンターで、およそ十二年ほどの間に一度も故障なく、ぼくの思い通りに働いてくれました。さすがにすっかり疲れたせいで、ぼくの願いの「両面印刷」ができなくなりました。プロの方にお聞きしましたところ、ゴム製の部品が硬くなって本来の柔軟な働きができなくなったのだろうということでした。サイトで調べたところ家庭用のパソコン・プリンターの寿命はおよそ五、六年だそうですからぼくの愛するプリンターはその二倍は働いてくれたことになります。
・ 十二年調子の悪かったことはありませんでした。
・ 文字がとても親しみやすくて読みやすい印字をしてくれました。
・ どんな紙にでも気持ちよくプリントしてくれました。とくに市販のコピー用紙なら全てに対応してくれたのです。しかも「両面印刷」でも・・・。
泣く泣く交換することにしました。で、「キャノン製:LBP6200」の弟分のキャノン製のプリンターを購入しました。ところが、この器械はなんとなくわがままでした。まず印字は濃くて、濃さを調整できません。繊細でスマートですが兄貴分よりは親しみやすくないのです。おまけに市販のコピー用紙のほとんどに渡って「両面印刷」をしてくれないのです。なんどもトライしましたがダメでした。用紙の屑を山ほど作ってしまい、仕方なく購入した電気屋さんに相談しました。じっさいにプリンターを持ち込んでいろんな用紙で実験してくださいました。うまくいくときと紙詰まりを起こす時があってお店の方も困っている様子でした。「メーカーさんへ修理に出すと、故障はありませんと返ってくるでしょうね。この程度では・・・。」というのです。
「だって、故障しているというよりも、購入して使い始めてこんな調子では不良品だと言った方が当たっていると思いますが・・・。」
「でも、うまく印刷できる時もあるじゃないですか。」
「本を作っているのですよ。たくさんの両面印刷中にいいときと悪い時があるなんて、ものすごい紙の無駄遣いになりますけど。」
「うちで売っている用紙を使えばなんとかなると思いますよ。両面印刷には用紙を選ぶ必要があるのではないですかね。」
「そんなこと言ったって、膨大な用紙の買い置きがあるのにそれが全部使えなくなるなんて考えられません。それでは以前の機械(「キャノン製:LBP6200」)のように市販のコピー用紙なら両面印刷できる機械に交換しようと思います。お金はかかってもいいので。」
「お客様の購入した器械が初めからそんな状態でしたら、初期不良ということで他社のプリンターでよければと交換して差し上げます。」
「ぜひ、そうしてください。 それからこのお店で販売している用紙も購入して見ます。」
もちろんお話は穏やかに進んで、そのようになりました。新しいプリンターは「ブラザー製のHL-L2460DW」というのと初期交換をしていただきました。
ところが、このプリンターもキャノン製の新しいプリンターとまったく同じ症状を呈してしまったのです。再度お店に相談に行きましたが、もう手の施しようがない様子でした。仕方なく山のような買い置きの用紙は諦めて(両面印刷でなければ使えるので・・・)、当電気店販売の用紙を使ってみました。みごとに紙詰まりの連続で使い物になりません。そこで、困惑したぼくは今度は『家庭用プリンターで両面印刷できる市販の用紙』を探しに、あちこちの大型の電気店や雑貨等の量販店やデパート巡りをしました。
なんと、見つけたのです!!!!! 市販の両面印刷可能なコピー用紙というのがあったのです。
早速購入して「ブラザー製のプリンター」で使用してみました。確かに快適に両面印刷ができました。しかもブラザー製の印字の品質はぼくに向いているようでとても気に入ったものでした。ここでめでたしめでたしなのですが、いろいろと考えてみました。
プリンターもそうですが、最近の機械類には以前とは全く違う二種類の特徴があることに気がつきました。『以前』、それはもう半世紀も前のことになりますけれど、生活器具類は「丈夫」であることが高品質の条件だったように思います。つまり「丈夫で壊れない」ことが良い品としての条件でした。またより使い勝手がよくて、今までよりも仕事の幅が広くて少しのことならカバーしてくれる融通性のある便利さを備えていることも良い品の条件だったように思います。するとそんな機器は一度買うといつまでも愛用できるので、いわゆる商品としては回転率が低くなります。作る人も売る人もいわゆる商売には不向きな品になってしまうのでしょう。
いつの頃からかは知りませんが、一定の期間の使用で壊れるように、今までできた仕事の範囲を狭くしてもう一つのものを求められるようにした品を作るようになったようです。パソコンはおよそ五年ぐらい使用すると効率の良い仕事ができなくなるように、プリンターも五年ぐらいで使用不能になるように、その他の機器も使用期限をどのくらいにするかを工夫してメーカーさんや小売業さんの商売に叶う品を作るようになったことが顕著になってきました。例えば、一度買えば一生使えるような包丁はメーカーさん小売さんにとっては良い品ではなくなったように・・・。
次の包丁を購入してもらうにはどの程度の耐久性がバランスよく好まれるかを研究して、「商売になる品」の開発に制作のシフトが明確に変化してしまっていることを、今回はあからさまに知らされました。
もうプリンターはどんな市販のコピー用紙でも両面印刷が可能なものを作っていては「商売にならない」ということがわかりました。器械を選び、用紙を選び、それ以外は使えないようにすると、いろんな器械を作る必要が出てくるし、いろんな用紙が必要になってくるので、メーカーさん小売さんが儲かる条件が広がるのでしょう。つまり利用者はメーカーさん小売さんに操られているのだということがわかりました。
ぼくは今傘寿を半分過ぎた年齢です。しぶしぶ購入せざるを得なくてスマホなるものを買いました。例によって五年ほどで使えなくなりました。その間にはいわゆる使用保証金を月額で支払ってきました。なのにそのスマホをお店に持っていくと修理にお金が掛かるというのです。その理不尽さを訴える時にお店の人に言いました。「貴方たちは世の中を便利にするためにこんな器械を作って普及させたのだろうけれど、そのおかげで赤電話や公衆電話がほぼなくなってしまいましたよね。自分たちの商売のために年寄りをより不便にさせてしまった責任を感じていますか?」と。お店の人たちはぼくの疑問に答えることができませんでした。
これはまた別の話なのですが、ある機器を購入した時にその機器の不具合をメーカーに質問したことがありました。すると、その回答には「回答の代金をいただきます。」といのです。「あなたの会社で作った機器を購入して不具合の理由を聞いているのに、なぜ料金を支払わなければいけないんですか?」と再度尋ねました。その回答がこうです。『私どもでは予想もしていない問い合わせには答えられません。』というのです。腹が立つよりも呆れる思いが強くて、そのままにしてしまいました。不具合の部分がさほど大事なことではなかったし、一応条件をこちらで斟酌すればなんとかその機器は使えましたので放っておいたのですが、この対応を皆さんはどう思いますか? ・・・・・・?????
昔は『お客様は神様です。』という言葉がありました。今は『お客様は飯の種、食えない客は虫(無視)の種』ということでしょうか。
やな、世の中になりました。
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