線香花火
どんなにやさしくても
きみは風
たとえ「そよ風」と呼ばれたとしても
ちょっとだけ遠慮して欲しい
静かに夕暮れが始まった
ぼくたちは線香花火を持っている
手さえも揺れないように緊張しながら
じっと火をつけてくれるのを待っている
心を預けられる人たちと
夕飯を共に楽しんだ人たちと
なぜか胸を小さく弾ませて・・・
シューッと火が始まる
小さく火がほとばしる
黒煙が匂いながら流れて
細い線香花火の下端で
マグマが激しく回転している
まるで太陽のように丸まって
次の爆発のためのエネルギーを
内に充満させているようだ
静かに時が充実すると
初めのひとつがシャッと
小さなマグマの玉から離れて
一瞬にたんぽぽの羽毛のような
光の華を咲かせて消えた
やがてそれは次々と
マグマの玉の周辺に飛び散り
いつかものすごい数の光の華を放ち
やがてクライマックスを迎え
次第に自らには似合わないほどの
素晴らしいエネルギーを使い果たしたように
力をなくし華を失い
やせ細ったマグマの玉は
小さく小さくなって
弱々しく光の雨だれになり
すうっと終る
すると深い闇がぼくたちを包む
それはまるで安堵のようだ
そしてなぜか辺に寂しさが漂う
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